A room in honcho

器でもあり資材でもある形式

郊外のターミナル駅にほど近い分譲マンションの一部屋を改修した。築40年弱を経過した83の住戸はほとんどが3LDKとなっている。現在では各戸各様の事情があるはずだが、多くは夫婦や単身で引き続き住むか子世帯に明け渡す、あるいは割安で売却するかのいずれかで、今のところ出口は少ないようだ。年月を経たファミリータイプのマンションでは一般的な状況なのだが、ここでは所有を続けることが前提で、賃貸で運用するという少数派の道を探ることになった。

切実に賃貸物件として競争力を求めるとすれば、使い手の間口を広げるしかないと思った。できるだけ多くの価値感を受け入れて、能動的に使い方が発見されるような在り方に望みを託すしかないのではないか。そのためには、この3LDKのマンションの一部屋が複数の視点を得て、心地よい器のようにも、未来を構築する資材のようにも見えてほしい。そんなことをイメージしながら、主に3つの事を試みた。

ひとつめは、階段室型の利点を活かして使い方の選択肢をつくること。中央の押入れを(襖を残して)解体しキッチンの向きを変える。和室とリビングを収納で仕切り、その上に長押を飛ばした。南北両面を個室にもリビングにも、ひとつながりにも利用できる。次に、名前の付いたまとまりを読み替えること。移設や再利用を多用し、新設であっても近しい材とする。押入れから入る和室や、襖が可動間仕切りとなった洋室、リビングのドアがついたトイレ、点検口が天窓になったUBなど、見慣れたものの転用でできていることがわかる。3つめは、単にモノの集合にも見えること。間仕切壁の端部にスリットを切り、キッチンや下駄箱、枠材などを壁や躯体から離す。躯体の一部や戸境壁、配管などをバランスよく現しとして、それぞれが自然に、自律的に、ただそこにあるように見せる。

結果として、慣習化した3LDKという形式が基点となって複数の捉え方が併存する動的な場所が現れた。そのように感じて興奮していたところ、内覧にやって来た同じマンションに住む年配の女性たちは、キッチンの向きや部屋の明るさに感心し自宅との違いを色々と指摘してくれたのに、最後まで壁の隙間や独立した枠材に気を留めることはなかった。少々残念に思ったが特に説明はしなかった。これこそが視点の自由、ということなのだ。

 

所在地:千葉県船橋市

敷地面積:2,385.44m2

延床面積:7,760.76 m2(建物全体)74.24m2(改修部分)

構造/規模:鉄筋コンクリート造(2017年現在築37年)/地上8階+塔屋1階(改修部分4階)

天井高:2,455mm(和室2,290mm UB 1,850mm)

用途:住宅あるいは兼用住宅を想定

建築・監理・管理:馬場兼伸 許光範(元所員)

施工:分離発注

大工:高本設計施工 担当/高本貴志

内装:コモドホーム 担当/森山正彦

建具:神山建具 担当/神山正次

衛生:エフワンエンジニアリング 担当/赤山敬

電気:キトラ電気 担当/不川龍司

発注元:個人

施工期間:2016.06‐2016.8

撮影:山岸剛