FARMER'S GOTEMBA


          

出来事がつくる複数のまとまりへ

JA御殿場の組合員向けスーパーマーケット(Aコープ)を全面改修した。採算の合わない店舗事業の転換を管内の農産物直売所の統合により行う計画で、農協本店の目の前で市街地に近く、246号線沿いという好立地であるこの場所が選ばれた。既存建物は鉄骨造で片流れの折板屋根、前後に外壁を延長した看板を持つ郊外の商業施設に典型的なつくりで、バックヤードや加工室など裏方の諸室が売り場の背後に並ぶ平面が特徴的だった。御殿場には富士山の登山口がありテーマパークやアウトレットモールが立地する観光地だが、農産物の産地としては生産量が少々乏しく、ここでは直売所の集約と共に生産者の減少対策や仕入れ先の再構築、付加価値を産む商品開発といった多様な課題があり、定まった機能を満たすというよりも、さまざまな模索の場になるのではないかと感じた。

バックヤード/売場という裏表の構成を内包したパッケージを、ほどよいサイズの部分の組み合わせに解体し、複数の関係が共存する複雑な全体に再編しようとした。

サッシラインを4.7m中に移動し軒先を深く取り、裏表の境界として帯状に並んだ既存の加工室や厨房には切れ目を入れて分割、売場を縮小しつつそれを囲むようにいくつかの小さなヴォリュームを加えた。

試みの場所のためにできることは何か。上記のような小回りが利くスケールや使い勝手、自然光による採光などと合わせて、目の前の状況をなるべく既成の価値観で先回りする事なく扱いたいと思った。たとえばスーパーマーケット特有の3.5m高の天井やコーナーを性格付ける色使い、建物前後の看板状の形態なども引き受ける「すべてを材料とする」とでもいうような鷹揚さでつくることができないか。

天井高ではなく残った天井とその周囲の関係、コンポジションではなく建材固有の色のぶつかり、プロポーションではなく痕跡をつなぐ造形といった、出来事を試行するような検討を近視眼的に繰り返した結果、次第に独特の様相を呈した部分と躯体の架構が見え隠れする全体が現れた。

出来事的な複数のまとまりとそれらを支える仕組みのどちらが先立つでもなくバランスしている状態が、定型を起点としつつ先の定まらない行為の場としてちょうどよかったように思う。不確かな現在を前向きに建築化する方法の試みとも言えるかもしれない。

(新建築2019年3月号より)

 

 

 

所在地:静岡県御殿場市

敷地面積:6,260.99㎡

延床面積:1,618.56 ㎡ (建築面積:1821.80㎡)

構造/規模:鉄骨造/地上2階建

最高高さ/軒高:11.06m/8.55m

用途:店舗

建築:馬場兼伸,吉川直輝

構造:耐震構造エンジニアリング

設備:ZO設計室

サイン:TAKAIYAMA.inc

テキスタイル:Studio Onder de Linde

施工:臼幸産業

発注元:御殿場農業協同組合

設計施工期間:2017.05‐2018.7

撮影:山岸剛