House in seta

所在地:東京都世田谷区

敷地面積:109.11㎡

延床面積:93.96㎡

構造/規模:RC造+木造/地上2階・地下1階

最高高さ/軒高:6.0m/7.3m

用途:専用住宅

建築:馬場兼伸+古澤大輔+黒川泰孝

構造:アラン・バーデン+犬飼裕瑛/ストラクチャード・エンヴァイロンメント

施工:アイガー産業

発注元:個人

設計施工期間:2009.12 – 2011.10

撮影: 中山保寛/新建築社(1,3,4,6,9,11,15,16,17枚目) 、清水謙(2,5,7,8,10,12,13,14枚目)

 

規制を乗り越えるアイデンティティの提示

 

100坪を超える土地にゆったりとした邸宅が立ち並ぶ、格式を保ってきた閑静な住宅街であるが、こうした地域でも土地の細分化が始まりつつある。計画敷地は、旧家を取り壊して3つに分譲されたうちのひとつで、最低敷地面積制限に合わせた約100㎡という規模である。また地域協定、風致条例といった制限がかかり、セットバックや緑地率、斜線などの規制が重くのしかかる。このように細分化された敷地では、本来良好な環境を誘導するはずの規制の効果はまったく期待できず、むしろ中途半端な大きさの庭や塀、植栽といった形骸化された風景が生産される原因となってしまう。

厳しいセットバック制限をかいくぐり平面的な広がりを得るため、樹木を植える平場と駐車場を除いて、敷地全体を地下半層ほど掘り下げることにした。一方で地上には、地下と対照的に小ぶりな木造の小屋を載せることで斜線規制をかわしながら、十分すぎるほどのセットバックを行っている。地階から上階を見上げれば、小屋の基礎の特徴的なストラクチャーが露になっているのが分かる。大ぶりな地下と小ぶりな小屋との隙間には屋根を架け、セットバックするべき部分を建築的操作によってつくり込んでいる。こうして一律に課せられる空間的想像力を欠いた規制を、建築的な問題へと引き寄せることを試みている。

地下との隙間を埋める屋根や地上の小屋は、共に下屋や切妻といった建築言語でできており、邸宅のフォルムや大きな屋根面といった既存の言語を参照している。一方で、動線を確保するために宙にういた下屋(屋根あるいは壁)により、この建物の印象が過去への接続といった一義的なものに陥ることを回避している。いわば安定と不安定の同居したようなこの姿は、格式の継承と変化に伴う更新が迫られているこの地域の、深層へ接続するものとしてとらえることはできないだろうか。

 

このように、その地域の現在をかたちづくる目に見えない構造のようなものと、そこに建ち上がる建築の構成との間に、ある確かな関係性を築くことが、地域と建築を取り巻く状況にアイデンティティを与えていくことになると考えている。

 

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